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診療案内(過眠症・睡眠時無呼吸症候群)

専門外来『過眠症』について

 当診療所では、「過眠症」の中でも特に睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー関連疾患、ムズムズ脚症候群、睡眠不足症候群等の患者さんを対象に診療を行っています。
 
 「過眠」とは、日中に過剰な眠気が起きる状態です。仕事中や授業中、日常生活を送るのに支障をきたすような強い眠気の場合には病的と判断されます。ときには、運転中や作業中に大事故を引き起こすこともあります。「過眠症」が疑わしい場合には、早めに専門医を受診されるようお勧めします。「過眠症」の多くは、適切な治療により確実に改善されます。

 過眠症状を呈する疾患には、睡眠中に起こる異常な事象(例えば頻回な呼吸停止や下肢の動きなど)によって惹き起こされる中途覚醒により睡眠の質が悪くなり、結果として昼間の眠気や過眠が生じる続発性過眠症(睡眠時無呼吸症候群やムズムズ脚症候群など)と睡眠・覚醒の機構に問題がある中枢性過眠症(ナルコレプシーなど)、さらに生活習慣からおこる睡眠不足症候群等があります。
 これら過眠症状を呈する疾患について、それぞれの特徴的症状、診断法及び治療法について概説致します。

Ⅰ 無呼吸症候群

(睡眠時閉塞性無呼吸・低呼吸症候群)

 睡眠中に上気道の完全な閉塞あるいは部分的閉塞が生じ、このため睡眠分断(*1)動脈血酸素飽和度の低下(*2)をきたす疾患です。

【特徴的な症状】
睡眠中の大きないびき、窒息感や喘ぎ呼吸、夜中の途中覚醒や夜間頻尿、日中の強い眠気、その他起床時の口渇感や頭痛、頭重感が訴えられることが多い。

【有病率】
2~4% (男性4%、女性2%)

【合併症】
重症の場合、心臓血管系疾患による死亡率が本症の無い人に比べて「5.2倍」も高いと報告されています。

【診断法】
①簡易検査(簡易型呼吸モニター検査):診断のスクリーニング的な検査。外来にて取り付け方法の説明を受け、自宅にて検査を行います。イビキや呼吸障害の程度を示す動脈血酸素飽和度の変化や無呼吸・低呼吸指数(AHI)(*3)の程度を知ることが出来ます。
②精密検査(PSG検査):精度の高い検査で、1泊の入院が必要です。検査技師の指示に従い検査が行われます。

【治療法】
①口腔内装置療法 (マウスピース):マウスピース様の歯科装具を専門歯科医に作成を依頼します。睡眠中に見られる下顎の後退を防ぐことにより気道の閉塞を防ぎイビキや無呼吸を改善します。主に、後述するCPAP療法の適応にならない中等症以下の軽い症例が適応になります。
②CPAP療法(経鼻的持続陽圧換気療法):就寝前、鼻部にマスクを取り付け、マスクを介して空気を送り込み、上気道を常に陽圧に保ち、上気道の閉塞を防ぐ療法です。無呼吸・低呼吸指数が20以上の場合、医療保険が適応となっています。
③外科療法(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術):多くの場合、扁桃摘出術が同時に行われ、重度の無呼吸・低呼吸症候群の症例に行われます。術者(耳鼻咽喉科医師と十分検討の上、手術のリスクや術後の効果について説明がなされたあとに施行されます。
④新しい治療法の紹介(植込み型舌下神経刺激療法):米国で臨床応用が始められ、日本においても2018年に医療機器として承認されています。オトガイ舌筋の支配神経に電気刺激を与える装置を植え込み、睡眠中の上気道の虚脱を防ぐ治療法。CPAP療法が継続不能な症例に対する新しい治療法として今後注目されます。
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*1:睡眠分断*短時間(15秒以内の)脳波検査上の覚醒により睡眠が中断される状態。睡眠分断が多いと質の悪い睡眠となります。
*2:動脈血酸素飽和度の低下*全身組織の低酸素すなわち全身の酸素欠乏状態をもたらします。
*3:無呼吸・低呼吸指数(AHI):10秒以上の無呼吸あるいは低呼吸が睡眠1時間に何回見られるかの指標です。
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ポリソムノグラフィ(PSG)

医学ブログ「医学的見地から」より引用

マウスピース

CPAP療法

UPPP(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)

植込み型舌下刺激療法

Ⅱ ムズムズ脚症候群

【特徴的な症状】
基本的には、下肢にムズムズ感、虫が這う感じ、不快感、かゆい、痛いなど異常感覚が訴えられます。しかも、この状況は夜間に集中して発現し増強します。脚を動かしたいという欲求が強いこと、動かすと楽になるのが特徴です。
PSG検査で、本症に周期性四肢運動(*4)が50から80%合併することが認められています。

【有病率】
2~4% 加齢とともに男女ともに増加し、比較的女性に多い。

【診断法】
下記表1に示す所見を満たせば診断がつけられます。

【治療法】
薬物療法:軽い場合は、クロナゼパム(ランドセン、リポトリール)中等度以上の場合は、ドパミン受容体刺激薬(プラミペキソール(ビ・シフロール)、ロチゴチン貼付薬(ニューロパッチ)やガバペンチン、エナカルビル(レグナイト)が使用されます。なお、ビ・シフロールは腎不全症例では慎重投与です。また、レグナイトは高度腎不全症例では使用禁止となっています。一方、ニューロパッチは肝排泄のため腎不全症例にも使用可能です。
誘因となるアルコール、カフェイン、薬剤の使用を避け、就床前にマッサージや軽い運動が勧められます。鉄欠乏が基礎疾患として認められる場合は鉄剤の補充療法が行われます。
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*4:周期性四肢運動:睡眠中20~30秒間隔で不随的にしかも規則的に運動が繰り返されます。PSG検査で確認されます。
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表1

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Ⅲ ナルコレプシー及びナルコレプシー関連疾患

1.ナルコレプシー

creazillaより引用
【特徴的な症状】
耐え難い眠気と居眠り、とにかく眠く、通常では考えられない状況でも居眠りをしてしまうことがあります。日中、情動脱力発作(カタレプシー)と云われ、笑い、喜び、怒りなど感情が高ぶるときに、体の一部(首の脱力、眼瞼下垂、顔面の緊張低下等)、多くは、下肢支持筋の筋緊張低下ないし消失によりその場にしゃがみ込んだり倒れたりすることがあります。その他、入眠時に睡眠麻痺(いわゆる「金縛り」)や幻覚を体験することが多い。

【ナルコレプシーの型】
情動脱力発作を伴うか否かにより、伴うものはⅠ型、伴わないものはⅡ型に分類されます。

【検査】
夜間睡眠PSG検査と反復睡眠潜時(MSLT)検査(*5)により睡眠の質的変化や睡眠潜時の極端な短縮が検出され、更に睡眠開始15分以内でのSOREM(*6)の出現回数がチェックされます。

【治療】
・規則的な日常生活を送ること。
・ナルコレプシーの類型にかかわらず、昼間の眠気と睡眠発作(*7)に対してはモダフィニル(モディオダール)が投与され、効果が不十分な場合にはメチルフェニデート(リタリン)に変更あるいは追加されます。情動脱力発作、入眠幻覚、金縛りに対してはクロミプラミン塩酸塩(アナフラニール)が処方されます。
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*5:反復睡眠潜時(MSLT)検査:眠りに入るまでの時間(睡眠潜時時間)、入眠後15分以内に出現するREM睡眠の出現回数が調べられます。PSG検査が行われた翌日に引き続き行われます。
*6:SOREM:REM睡眠は健常者では60~90分後に出現しますが、ナルコレプシーでは入眠後15分以内に出現します。
*7:睡眠発作:本人が気づかないうちに眠り込んでしまう症状。
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2.特発性過眠症

【特徴的な症状】
居眠り時間がナルコレプシーに比べて長い事、また、情動的脱力発作がないが睡眠麻痺(金縛り)や入眠時幻覚は見られることがあります。

発生頻度はナルコレプシーよりも少なく1/4から3/4と言われています。
発症年齢はナルコレプシーと同じく10~20歳代。

【治療】
2020年2月21日より、ナルコレプシーに用いられるモディオダールが本症にも保険適応となり使用可能となりました。金縛りや入眠時幻覚に対してはクロミプラミン塩酸塩(アナフラニール)が処方されます。

睡眠不足症候群

MedicalNote不眠症のデメリットより引用
 最近のデータでは人間の脳は平均7時間寝るのが最適とされています。睡眠時間が6時間未満では、7時間から8時間睡眠に比べて2.4倍死亡率が高いと報告され、更に睡眠不足は、肥満、糖尿病、心臓病、うつ病を引き起こす危険因子であることが明らかになっています。
 働き盛りの年齢で睡眠時間を惜しんでまで仕事に邁進されている方が見受けられますが、睡眠不足の心身に及ぼす弊害について今少し理解を深められることが必要と考えられます。

【睡眠不足を解消する方法】
・治療は睡眠日誌をつけることから始められます。
・睡眠時間が平均7時間確保されるよう生活習慣を見直します。
・どんなに忙しくとも睡眠時間は削らないよう心がけます。
・睡眠環境(寝室)の調整、光・音・温度・湿度を快適に保ちます。
・スマホ、パソコン、テレビなどを見る時間を制限し、夜遅くまで光を浴びない配慮をします。

参考文献

・睡眠障害の対応と治療ガイドライン 内山 真 編集2019年10月
・T.Young et al.:Sleep 31:1071.2008
・PJ.Stollo et al.N.Eng.J.Med.370:139,2014
・千葉伸太郎 日本医師会雑誌 149:273,2020
・睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)2013年
・Y.Amagai et al.:J.Epidemiol. 14:124,2004
・三島和夫 厚生労働省 e-ヘルスネット
       睡眠と生活習慣との深い関係
・筒井未春 心身健康科学 4:69,2008
・粥川裕平等 睡眠障害診療マニュアル P.61,2003 睡眠不足症候群

他の医療機関との連携

下記医療機関と連携して検査、診断、治療、転院相談などを行っております。

■平沢スリープ・メンタルクリニック(関連病院:ロイヤルこころの里病院)
  〒359-0037 埼玉県所沢市くすのき台1-10-10 TOSHIビル2号室
  ℡ 04-2941-2711

■所沢呼吸器科クリニック・付属睡眠呼吸障害センター
  〒359-1124 埼玉県所沢市東住吉7-8 富士山ビル4階
  ℡ 04-2940-8180

■ハッピーバース・ライフクリニック
  〒350-1101 埼玉県川越市的場2-7-7
  ℡049-233-8821

専門外来担当者(吉田 哲)の資格

・医学博士
・日本睡眠学会総合専門医
・日本呼吸学会専門医
・日本内科学会認定医
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